恋は積もって

 街灯が照らす帰り道。歩いて肩が触れ合うたびに、離れがたくなる。家路に向かう足取りは、自然と遅くなってしまっていた。
「場地さん、今日はありがとうございます。サイコーの誕生日でした!」
「そりゃよかったワ。おめでと」
 団地の公園まで着くと、千冬は夜でも眩しいくらいの笑顔を弾けさせた。放課後に待ち合わせして、ショッピングモールを巡り、近所のイルミネーションを眺めて帰る。そんな短いデートでも充足感を覚え、場地は口元を緩ませた。
「プレゼント、大事にしますね」
 千冬は首元のマフラーを撫でながら微笑んだ。
 チェック柄のマフラーは、最後に入った店で場地が選んだものだ。数日前、千冬に欲しいものを尋ねたら、一緒に新しいマフラーを探してほしいとねだられた。結局場地が選ぶことになり、贈る相手に見られながらの状況は、妙な緊張感が走った。
「つーかよォ、オメーが好きなの選べばよかったじゃん」
「それじゃ意味ねえっスよ。オレは場地さんが選んだモンがほしかったんで!」
 千冬は場地の両手を取って力説した。布越しの温もりが包み込む。千冬の付けている手袋は、去年の誕生日に場地から贈ったものだ。
「オレのためにプレゼントを選ぶ場地さんが見れて嬉しかったです。去年もそうやって、シンケンに選んでくれてたんスね」
 両手にぎゅっと力を込められる。ハッとして顔を上げると、千冬はいたずらっぽく笑っていた。
(それがねらいかよ……!)
 場地は千冬のたくらみに気付いた瞬間、すぐに顔が熱くなった。
 去年の今頃、場地はすでに千冬に惚れていた。些細なことも気になって、心が搔き乱されてしまうくらいに。
 千冬にはどんな色が似合うだろう。千冬はどんな柄が好みだろう。去年と同じように、そんなことばかり考えて選んでしまった。きっとあのときと、似たような顔をしていたかもしれない。
 視線を地面に落としてみても、傍らに熱っぽい眼差しを感じてしまう。決まりが悪くなって舌打ちをした。
「手袋もマフラーも……、場地さん色に染まってますね、オレ。超いい気分っス」
 顔を覗き込んで、蒼い瞳を煌めかせる。清々しく笑う恋人が憎らしい。なのに、愛おしくて、余計離れがたい。
 だから―――
「あのさ……、今日、親いないんだけど」
 場地は顔を顰めながら、ぎゅっと指先を握る。手袋なんかじゃなくて、その下にある温もりに触れたかった。
「行きます!」
「即答かよ」
「こんなの、一択でしょ」
 勢いよく胸に抱き寄せられて、ふっと噴きだした。
 付き合って二年目。恋愛は青帯ぐらいには上達したと思ってたのに。抱擁だけで簡単に心臓が早まってしまう。だけど同じくらい、騒がしい千冬の心音が、耳の裏まで伝わってくる。
「オレだって、千冬の色に染まってる」
 甘い言葉も反応も、悪くないものだと思えてしまうから。
 素直にそっと囁けば、鼓動はさらに高鳴るばかりだった。